- 「パートを辞めたいのに人がいないからと、承諾してもらえず困っている」
- 「引き止められたら断る勇気がなく、パートの辞め時を見失っている」
どの職種も慢性的に働き手が足りていない今、このような悩みや精神的な負担を抱えている人は少なくありません。現在進行形ではなくても、以前に同じような経験をした人は多いでしょう。
結論を先にいえば、パートの人手が足りていないから辞められないと、必要以上に思い悩む必要はありません。
パートを辞めたければ辞めていいのです。
本記事では、なぜはっきりとそういえるのか、その理由を詳しく解説しています。
また、辞めさせてくれないときの対処法や円満にパートを辞める方法をご紹介しているので、「パートを辞めたい」と悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
人がいないパートを辞めることを気にしなくてもいい理由
- 「人手不足の状況で自分が辞めたいといいだせば、一緒に働いている同僚への負担が大きくなってしまう」
- 「働き始めたばかりのパート辞める理由が人手不足なんて、迷惑になるのでは?」
パートを辞めたいのに言えずに悩んでいる人は、このように思っているのではないでしょうか。
憲法で退職の自由が認められている
日本では、憲法で労働者に退職の自由を認めています。
- 契約期間を定めなかった場合は、民法第627条によりいつでも解約の申し出を行える
- 1年を超える有期雇用契約では、労働基準法第137条により契約初日から1年が経過していれば退職は可能
契約期間が決まっていないのであれば、法律上は「退職します」と伝えて2週間が経過すれば、企業側の都合や引き継ぎなどをせずに退職は可能。
また、契約期間が3年の条件であっても、3年以内に辞められます。
人手不足を理由にパートを辞めさせないのは、雇用側の法律違反になります。当然ながら、パートを辞めるにあたって罰金や違約金などを支払う必要もありません。
人手不足は会社の責任なのであなたには関係ない
職場の人手が足りていないのであれば、上司や会社の上層部に状況を改善する責任があります。
人が入っても次々に辞めてしまうのであれば労働環境を見直し、そもそも募集に人が集まらないなら給与や休みの日数などを再考しなくてはいけません。
こうした基盤を整えない限りは、人手不足は解消されません。
経営者の立場で会社を見る必要はない
パート人手不足きついのは、「あなたが原因で起こっているのではない」と、まずはあなた自身が自覚する必要があります。
特にパートが1~2人のような規模で働いていると、雇い主と同じくらいの責任感で仕事や活動を行ってしまう人もいますが、あなたはあくまでも雇われている立場。
もし今、「パートを辞めたいけれど人がいないから、私がなんとかやるしかない」と思っているなら、それは従業員の立場からではなく、経営者の立場として会社を見ていたり、責任感を背負い込んでいるサインといえるでしょう。
退職=裏切りではない
「自分が辞めてしまうと残った人に裏切ったなどと思われてしまうのでは?」と思うかもしれません。しかし、あなたより先に辞めた人に対して、同じようには思わないのではないでしょうか。
- 「この職場ならしかたない」
- 「辞められてよかったね」
と思いませんか?
あなたがパートやアルバイトを辞めても、誰もあなたを責めません。悪いのはあなたではなく会社だということを同僚たちは分かっています。
上司の困り事にあなたの人生を捧げる必要はない
勤め先の上司に辞めたいと伝えても、「困る」「助けてほしい」などといわれたら、性格が優しく真面目な人ほど、周囲への配慮から「自分が我慢すれば」と思い詰めてしまうでしょう。
しかし、そのような責任をあなたが背負う必要はありません。
損害賠償請求は脅し文句
人件費が必要なのは、働き始めてからではありません。事前に募集のために広告を出したり、面接などで社員の時間を割くことにも費用が発生しています。
採用後は制服の準備や研修などに会社のお金が使われています。たとえパートであっても、会社側はこうした経費を負担しているのが事実。
また、雇用契約では契約期間が決められていて、契約期間中の退職は原則としては認められていません。
そのため、パートを辞めたいと申し出た状況によっては、会社側がこれまでかかった費用に対する損害賠償を請求する権利があります。
しかし、会社側から損害賠償を請求するといわれて、本当に請求されたケースはほとんどありません。
理由は訴訟費用の用意や損害金額の算出などがかかるからで、そこにお金をかけるなら会社側としても次に採用する人にお金をかけたいのが本音なのでしょう。
ただし、実際に損害賠償を請求されるケースは少ないからといって、雇用主に対して粗暴な態度で退職を切り出したりすれば相手も黙ってはいません。無断欠勤を繰り返す、勤務中に決められた仕事をしていなかったなど、会社に実害が出ていた場合は、費用や手間を踏まえても訴訟に踏み切る可能性はあります。
反対に、勤務中にこうした常識外の行動をとっていないのであれば、訴訟を起こされる可能性は低いでしょう。
人手不足を理由に辞めさせてくれないときの対処法
パートを辞めたいと伝えたとき、人がいないからと引き止められても、雇用契約内容や法律に違反していないのであれば正々堂々と辞める姿勢を貫いてください。
とはいえ、「それができれば最初からやっている」という人は少なくないはず。
なかなか相手が承諾してくれないのであれば、ひとりで戦うのではなく、周りを巻き込んであなたが有利になるように体制や支援の輪を整えていきましょう。
人事部に一声かける
パートを辞めたいときは、まずは直属の上司に伝えるのが社会人のマナーです。
しかし、人手不足が常態化している職場を管理している上司ですから、「考え直してほしい」「もう少し待ってほしい」など、結論を先延ばしされる可能性は高いです。
後日、上司が退職を承諾してくれるのであれば良いですが、回答がなく、そのままなし崩し的に働かざるを得なくなるケースが大半のため、埒が明かないと感じたら従業員の登用を担っている人事部に直接申し出てください。
本来であれば直属の上司から人事部に退職の申し出が行われるはずが、直接本人からの申し出に人事部からは「どうして上司を通さないの?」と尋ねられるかもしれません。そのときは「辞めたいと伝えてきたが聞き入れてもらえなかった」と正直に理由を話しましょう。
当然、人事部から直属の上司に聞き取りされるため、上司からは何かしら不満をぶつけられる可能性がありますが、聞き入れてくれなかった上司が悪いのですから、気に留めず、退職日まで穏やかに過ごしてください。
録音や録画で物的証拠を残す
人事部に「上司が退職を聞き入れてくれない」と伝えても、上司は上司で「そのような事実はない」と反論するかもしれません。
「言った」「言っていない」の水掛け論では話が進まないので、上司に退職を申し出るときは録音または録画をおすすめします。
上司とのやり取りを収めて、人事部に証拠として提出しましょう。
パート先に内容証明を送る
人事部のない会社であれば、労働基準監督署(労基)への相談も視野に入れてみましょう。ただし、労働基準監督署が直接、会社に取り合ってくれることはありません。
一刻も早く退職したい場合は、やや強引にはなりますが、退職願を内容証明でパート先に郵送してしまうのもひとつの方法です。
内容証明とは、以下の内容を日本郵便が公的に証明するもの。
- いつ(郵便を差し出した日付)
- 誰が(差出人の住所・氏名)
- 誰に(宛先の住所・氏名)
- どのような内容(文書に書かれた内容)
退職届は会社が受け取った時点で効力が発生するので、確実に辞められます。しかし、退職日までは会社に出社するため、感情的になった上司とトラブルに発展する可能性は捨てきれません。
「もうすぐ辞めるのだから」と気にせず過ごせる人ならいいのですが、気まずい関係の人と毎日顔を合わせるのは相当のストレスです。
できるだけ平穏に事を済ませたいなら、内容証明は送らず、話し合いで解決するのが良いでしょう。そのとき、内心は色々思っても、お世話になったとお礼を伝えられれば、少なくとも関係性は良いままで終われるはず。
そこまで冷静に対処できないという人は、退職代行を利用するのがおすすめ。退職代行に依頼すれば嫌な会社にも上司にも会わずに、しかも有給消化や未払残業代などの交渉もお任せできます。弁護士や行政書士が行っている退職代行であれば、民間の業者は行えない退職届などの書類作成を依頼できるメリットもあります。
スムーズにパートを辞めるには
パートを辞めたいと思ったら、あらかじめ以下の項目をチェックした上で、上司との面接を想定したシミュレーションしておくとよいでしょう。
行き当たりばったりで行動するよりも、足に地がつき、冷静に対応できます。
上司に対面で辞めたいと正直に言う
退職の意思はLINEや電話、メールではなく、直接上司に対面で伝えてください。
LINEや電話での退職の申し出は軽く感じてしまい、本気とは受け取ってもらえません。
一方で、対面で伝えるのはそれなりに勇気のいること。それゆえに上司からしても、退職の意思は強いと受け取ってもらえます。
なお、直接伝えるときはタイミングも重要です。忙しい時期や就業時間中は避けてください。仕事の前、もしくは後に、落ち着いて話ができる状況を選びましょう。
退職理由は体調不良や転職がベスト
人間関係や仕事に対する不満があって退職する場合であっても、退職理由にはその旨は述べてはいけません。適当な退職理由を探すために、辞める理由ランキングなどを参考にするのも止めましょう。
こうしたサイトには新卒で男性側の意見として「年収や給料が低い」「希望の職種と違った」などがあり、いずれもパート勤めの女性や主婦の例文としてはややふさわしくないからです。
そのため、パート勤めを辞めたい場合には、以下の理由にするのが無難です。
- 正社員への転職が決まった
- 自分や家族の体調が悪い
パートからパートへの転職なら、「このまま働けばいいのにどうして?」などと上司にいわれてしまいますが、以前から正社員として入社できる求人を探していて、今回応募したら採用されたといった理由なら無理に引き止めにくくなります。
扶養内から扶養外へとシゴトの働き方をシフトしたい、という理由も主婦にはおすすめ。
体調不良や介護も引き止めにくい理由のひとつですが、なかには診断書の提出を求める会社もあります。そのため病名は嘘を吐かず、「調子が良くないので静養したい」「家庭の事情で」のような伝え方が良いでしょう。
また、旦那さんの転勤や子どもの育児が大変といった理由は、失敗しやすいので避けてください。転勤したはずが町で偶然上司と出くわして気まずくなったり、育児経験のある上司なら「こどもは成長するから、大変なのは今だけ。両立できるはず」などと退職を拒まれる可能性があります。
とはいえ、上司に必ず納得してもらえる明確な理由は分かりません。人手不足の状況ながらパートを辞めた人の体験談などを参考にしながら、自分らしい言葉で伝えるのが良いでしょう。
退職届を作成する必要があれば対応する
パートの場合は、退職の意識は口頭で伝えるだけでOKとしているところがほとんどです。
とはいえ、パートでも退職届を出してくださいといわれる可能性はあります。退職届の提出期限までに作成し、上司に手渡しで提出してください。
不在時にデスクに置いてしまうと紛失したり、「受け取っていない」といわれてしまうので避けましょう。
源泉徴収票や貸与品の処分を行う
年度の途中でパート先を退職すると、年末調整が受けられません。そのため、退職が決まったら源泉徴収票の受け取りについて、必ず確認しておきましょう。源泉徴収票は確定申告や、次の職場で必要になります。
制服やロッカーの鍵など、勤務に使用していた貸与物は返却してください。返さずに退職してしまうと制服やロッカーの鍵を新しく作った実費の請求や、場合によっては業務上横領罪として警察に捜査されてしまいます。
また、社外秘のマニュアルを自宅に持ち帰ってしまうと、就業規則違反や秘密保持義務違反に接触する可能性があるので注意してください。
「自分は権利に倣って正当に会社を辞めたいだけなのに、辞めさせてくれない上司が悪いのだから、わざわざ人事部に掛け合ったり、労働基準監督署に出向いて相談や質問をするのは面倒」
こうした意見はもっともなのですが、勤め先がブラック企業だからといってある日突然パートに行かなくなる、会社へ連絡を絶つなどするのは絶対に止めましょう。
いくら会社や上司に問題があったとしても、こうした行動は無断欠勤扱いになり、懲戒解雇や損害賠償を請求される恐れがあるからです。
また、身内に連絡されたり、直接自宅に上司がやってきて怖い思いをするかもしれません。あなたは間違っていないのですから、バックレたりせず、正々堂々と退職を申し出ましょう。
実際に引き止められているは世の中に多数
このような悩みはインターネット上に散見され、知恵袋やガルちゃんを見ると、多くの人が辞めたくても辞められない状況に悩んでいると分かります。
ベストアンサーを求めて、質問を繰り返している人もいるでしょう。
悩みを投稿した人は電話で辞めたい旨を伝えると書いていますが、電話で伝えるのはあまりお勧めできません。
できれば対面で辞めたいと伝え、それでも上司が承諾しない場合は、「次のシフトからは出ません」とはっきりとした意思表示を行いましょう。
パートを辞めたいときは強い意思を持って直接申し出る
パートを辞めたいと思っても人がいないからと引き止められると、辞めにくい雰囲気に流されてしまい、次はもっと言いにくくなります。辞めると決めたら、絶対に引き下がらないくらいの覚悟を持ちましょう。
- ブランクがある人はなかなか雇ってもらえない
- 事務職は人気で就職できない
など、パート勤めを選ぶ女性の中には自分はスキルがないからと自己評価が低い人も多く、辛い環境で必死に頑張りすぎてしまうケースもあります。
パート辞めたいけど次がないという声もありますが、ストレス過多の職場ではやがて心身のバランスを崩し、お仕事がしたくても働けない状況に陥ってしまうかもしれません。
退職の判断が正しいのか不安に思う気持ちは理解できます。しかし、常にパートのことばかりを考えてしまい生活に余裕がない、出勤前に憂鬱になるなどのサインが出ている場合は早めに対処してください。
どうしても自分の力では退職が難しい場合は、退職代行比較サイトに会員登録して、jobsなどの人気の退職代行サービスに依頼して解決するのも良いでしょう。