結婚して専業主婦になる家庭は減少傾向にあり、現在では共働きが当たり前になっているものの、家事や育児の負担は、男性よりも女性に重くのしかかっているのが現状です。
育児をしながら働くワーキングママ(ワーママ)は、毎日多忙な暮らしの中で、子どもとの時間をどう確保するか悩みは尽きません。
ストレスや我慢を続けながら仕事(パート)を続けるより、退職して育児に専念したいと考える人も多いのですが、そもそも「子供」を退職理由にできるのでしょうか。
今回は、子供を理由に退職する場合の注意点や、失業手当はもらえるのかについて解説します。
退職理由に子供を使う場合の言い回し
結婚・出産を経て、育児をしながら正社員やパートの仕事を続けるのは、時間的にも労力的にも大変です。
特にパートで仕事をしている人は、離職理由の中で「家庭の事情」を使うのはもはや定番となっていますが、会社からすれば「入社前に分かっていたことでは?」と言い返されることもあるでしょう。
ここでは、相手に嫌な印象を残さず、円満退職するための具体的な言い回し(伝え方)をチェックしていきましょう。
子供との時間を確保したい
子供との時間を確保したいと思うのは、親として当然のことです。素直に「子育てに専念したい」と職場に申し出ても問題ありません。
お子さんとの時間確保を退職理由にする場合は、以下のような言い回しを意識してみましょう。
「急なお願いで申し訳ありませんが、子供が幼いうちは子育てに専念したいので、退職させていただきたいと考えております。後任への引継ぎは漏れがないようしっかりといたします。」
後任を探したり、引継ぎを行うには十分な期間が必要ですので、繁忙期と重ならないよう会社のスケジュールを確認して、退職の意思表示を行うことが重要です。
育児と仕事を両立できない
採用面接・面談の際に「育児と仕事の両立は問題ないか?」と確認されることがあります。入社前は「仕事と家庭との両立は可能」と考えていた人も、実際働き始めてみると時間的・体力的に辛くなる人も少なくありません。
そこで、以下のような言い回しを参考にしてみましょう。下記は、体力的に両立が難しい場合の例文です。
「最近は体調不良で急にお休みをいただくことも多くなり、御社にご迷惑をおかけしております。仕事と育児・家庭の両立が体力的に厳しいため、しばらく家庭に専念したいと思っています。」
このように、仕事と育児の両立が難しいということを正直に伝えても構いません。退職理由を伝える際は、「働き始めてから事情が変わった」「主人は出張が多いため協力が得にくい」「両立は想像以上に難しかった」などの言葉を添えるとより配慮のある表現になります。
子供の体調不良
幼い子供はよく熱を出すため、保育園から突然呼び出しされることがあります。そのため、急な早退を余儀なくされた母親たちは、職場の同僚や上司に迷惑をかけている負い目から退職を決意することも。
子供を病院に連れていく頻度が多く、仕事を継続するのが難しい場合は、以下のような言い回しが使えるでしょう。
「急なことで申し訳ありませんが、子どもの体調不良が続いており保育園からの呼び出しも多いので、仕事を辞めさせていただきたいと考えています。せっかく採用していただいたのに辞めてしまうのは私も心苦しいのですが、皆様にこれ以上ご迷惑をおかけするわけにはいきませんのでこのような判断に至りました。」
子供の病気を理由にすると、職場の人は「どんな病気?」と細かく聞いてくる可能性もありますが、詳細を伏せておきたい場合は「個人的なことなので…」といって断ってもOKです。
子供の習い事が忙しい
子どもの習い事を退職理由にするのは珍しいケースですが、子供の成長に合わせて働き方を見直す親もいて当然でしょう。
人の価値観はそれぞれなので、上司に納得してもらうためには、それなりの理由を伝える必要があります。以下、言い回しの例文です。
「子供が小学生になり習い事を増やしたのですが、送り迎えが忙しくなっており、これまでのようにまとめてパートの時間を確保するのが難しくなってきました。急で申し訳ありませんが、退職させていただきたいと思っております。」
子供が進学する
子供の進学や受験を理由に、退職を希望する場合があります。子供の受験には何かと親のサポートが不可欠ですから、上司も理解を示してくれるでしょう。
退職理由の例文は、以下のとおり。
「実は、子供が来年進学を控えております。親としてできる限りサポートしたいので、来月末で退職させていただきたいと思っています。引き継ぎはしっかりとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。」
キャリアより子育てを優先したい
パート職員であっても、長年の業績が認められれば正社員としてのキャリアアップも夢ではありません。しかし、仕事のキャリアよりも今は子育てを優先したいという人もいるでしょう。
この理由は、単なるわがままに聞こえることもありますので、上司にはそれなりの背景を説明する必要があります。
以下、言い回しの一例です。
「毎日公園でたっぷり遊ばせている専業主婦家庭の子供たちを見ていると、仕事と家事に追われて十分に子供と遊んであげられない自分を悔やむことがあります。長年勤めたパートを辞めるのは心苦しいのですが、夫婦で話し合った結果、子供が小学生になるまでは子育てに専念させていただきたいと考えています。」
家業と育児に専念したい
嫁いだ家が代々従事してきた職業であったり、パートナー(夫)が小売店、飲食店などのオーナーである場合は、繁忙期になると家業の手伝いに駆られることもあり、家業と育児で精神的・肉体的に両立が難しいと感じることもあるでしょう。
退職の言い回しとしては、以下参照。
「パートナー(夫)が始めた会社が忙しく、人手不足のため私も時々手伝っているのですが、通常の卸業に加えてイベントやマルシェ出店など外部での仕事の依頼が増えている状態です。子供もまだ幼いので手がかかり、頼れる両親も近くにおりませんので、家業と育児に専念させていただきたいと考えております。」
介護と育児が大変
内閣府の調査報告書によると、少子高齢化や女性の社会進出に伴う晩婚化・晩産化を背景に、働きながら親の介護と子育てを同時進行で行う世帯が増加しています。
子育てだけでも大変なのにそのうえ介護まで…という大変なイメージから、上司にも理解してもらいやすいでしょう。
以下、退職の言い回しです。
「先月より姑が体調を壊し、介護が必要になりました。今は子供を保育園に預けてから、姑を病院に送迎しているのですが、仕事中も保育園から子供の発熱で呼び出されることもあり、御社には遅刻や早退が増えてたびたびご迷惑をおかけしております。近くに頼れる兄弟もおらず、親の介護と育児が大変なため、退職させていただきたいと考えております。」
ワンオペ育児の限界
育児は夫婦で協力すると約束したはずが、仕事の都合で急遽、パートナー(夫)が単身赴任することに…そんなあなたに使える退職理由です。
親が一人で子どもを世話する「ワンオペ育児」家庭では、仕事をしていたほうが気がラクだというワーママも多くいますが、仕事と育児の両立にしんどさを感じている人も少なくありません。
以下、言い回しの一例です。
「夫が単身赴任のため、現在一人で育児をしていますが、精神的にも肉体的にも限界を感じています。仕事を終えても子供の世話と家事で毎日精一杯です。職場では気を付けているつもりですが、最近ミスも増えており、職場の方々にご迷惑をおかけしていますので、退職させていただきたいと考えています。」
不妊治療に専念したい
まだ子供がいない人向けになりますが、不妊治療と仕事の両立に難しさを感じている人は多くいます。
不妊治療は通院回数が多く、精神面・体力面での負担が強いられますし、妊娠中は、妊娠悪阻・切迫早産などのトラブルを考えると、早めに報告・業務の引き継ぎをしておく必要があるものの、厚生労働省の報告書(平成29年度)に記載されているとおり、不妊治療をしていることを職場にオープンにしていない人は多くいます。
上司との人間関係が良好で、何でも話せる間柄であれば問題ないのですが、不妊治療はプライベートなことなので基本的には言う必要はありません。
「家族との話し合いで決めたのですが、仕事を辞めて家庭に専念したいと考えています。一身上の都合で…」などと言って、嘘ではない理由(家業の手伝いがあるなど)を付け加えるのも良いでしょう。
退職理由に子供を使うのは妥当
退職する際に、家庭や子供の事情を理由にするのは全く問題ありません。むしろ職場の人間関係や待遇への不満と違って、引き止めらることなくスムーズに退職できるでしょう。
ここでは、退職理由に子供を使うのが妥当なポイントを確認しておきましょう。
家庭の事情は辞めやすい
「家庭の事情」は、退職時に都合よく使える言葉です。
家庭の事情には「自分自身を含めた家族や日常生活に関わる全ての都合」という意味合いがあり、プライベートなニュアンスが伝わります。そのため、相手に深堀りされずにスムーズに退職させてもらいやすいのです。
仮に本音としては、職場に対する不満で辞めるとしても、「家庭の事情」でカモフラージュできます。もし詳細を質問されても「プライベートなことなので…」と言えば、相手も根掘り葉掘り聞いてくることはないでしょう。
円満退職に繋がりやすい
会社を退職する際「もう会わないから」という気持ちで、いい加減に退職理由を伝えるのは危険です。
今後の長い人生の中でキャリアアップや人間関係を考えると、やはり円満退職しておいた方が身のためと言えます。子供や家庭を理由にすれば、「それならやむを得ない」となり、会社(組織)と揉めずに済みますので、退職理由としては最適です。
退職前に理想の働き方をイメージする
子供を理由に退職する際は、今後のことを考えて子供を優先できる働き方をイメージしておきましょう。
今の生活において何が問題でどんな暮らし方が理想なのかを、具体的に考えておくことで今後の働き方が変わってきます。
以下、理想の働き方を模索する際に、考えておきたい事の一例です。
- 通勤時間
- 出勤&退社時間
- 業務内容
- 残業の有無
- 給料(収入)
- 休みの日数
- 家事の分担
- 子供との過ごし方
など
子供を理由に退職を言い出すときの注意点
民法627条によると、2週間前に退職の告知をすれば問題なく退職できますが、引継ぎや後任探しを考慮すると1~3ヶ月前には申し出るのが一般的です。シフト制の場合は、次の月のシフトが確定する前に直属の上司に伝えましょう。
就業規則に従って、引き継ぎ資料の作成や後任への引き継ぎをしっかりと行える十分な期間を確保しスケジュールを組むことが大事です。
下記本文で、円満退職を実現するための注意点・ポイントを確認しておきましょう。
話す相手に気を付ける
退職の意思が決まったら、まずは直属の上司に伝えます。人事部署・役員・社長に直接退職の話をもち込むのはルール違反です。
休憩中で一緒になった同僚や従業員に辞めることを打ち明けたくなるかもしれませんが、おすすめできません。職場の士気や取引先との関係に影響するため、軽々しく口にしないほうが無難です。
上司と2人だけのタイミングを見計らって伝えることが重要ですが、上司が多忙な場合は事前にメールで「大切なお話がある」旨を伝えて、改めて話す時間を確保してもらいましょう。
質問に対する答えを練っておく
子供を理由に辞める場合、想定される質問にはあらかじめ答えを練っておく必要があります。その際、前向きな答えが望ましいでしょう。
家庭の事情とはいえ、上司や同僚としては事情を把握しておきたいと思うものであり、さらにできることなら退職を引き止めておきたいと考えます。
もし辞める理由を根掘り葉掘り聞かれて、あなたが答えたくない場合は「プライベートなことなので…」ときっぱり断ってもOKです。
話し過ぎない
職場での噂はすぐに広がるだけでなく、まるで連想ゲームのように自分の意思とは関係なく(いい加減な内容に)変えられていることもあるため、退職理由を伝える際は、詳しい事情まで話さず簡潔に伝えましょう。
もしどうしても詳しく伝えておきたい場合は、「他の人には言わないで欲しいのですが…」と言い添えて説明することもできますが、個人的にはあまりおすすめしません。
口が軽い同僚に「ここだけの話…」と言っても通用せず、話題の一部が独り歩きし、全く身に覚えのない噂が広がってしまうことも。認識の相違が起きないように、簡潔に伝えることを心がけましょう。
退職後のことも考慮する
自宅と職場が近い場合は、退職後も同僚や上司に街で遭遇する可能性があります。あるいは自分の子供と同僚の子供が同じ学校に通っていることもあるでしょう。
子供経由で退職の理由が嘘だとバレる可能性もありますので、その辺を考慮しながら退職理由を考えることが必要です。
子供の体調不良が理由で退職したのに、毎日のように子供が公園で元気に遊んでいる姿を目撃されたり、またはあなたの転職活動がバレると、悪い噂が流れて後悔するかもしれません。
子育て中に仕事を辞めたくなる理由
内閣府・男女共同参画局の資料によると、離職理由で最も多い回答が「子育てをしながら仕事を続けるのは大変だったから」となっており、子育てと仕事を両立させることの難しさが伺えます。
生きていくためにはお金も必要です。退職すれば収入が無くなるということですから、後悔しないようよく検討し決断することが大切です。ここでは、ワーママが仕事を辞めたくなる理由を、具体的に見ていきましょう。
仕事を任せてもらえない
産後の休暇が明けて職場復帰しても、子どもが幼いうちは体調を崩すことも多く、大きなプロジェクトや責任ある仕事を任せてもらえなくなったという声は多いものです。
現役の頃のように元のポジションに戻れないという現実を目の当たりにすれば、キャリアアップへの道は厳しく、精神的にも不安定になり仕事に対する意欲が湧かなくなることも。
仕事と育児の板挟みが辛い
仕事と子育てに毎日追われ、仕事・育児どちらも中途半端な状況から逸脱できないのは辛いものです。板挟みの苛立ちから、仕事を辞めたいと思う人もいます。
そもそも一人の人間が仕事も育児も完璧に行うのは、物理的に無理があります。今は育児に集中する時期と割り切り、子供が幼いうちはしばらく育児に専念したいと思うのは当たり前のことです。
子供の帰りを迎えたい
幼い頃の寂しい思いをした自身の体験から、子どもが小学生になるときに、家で子供の帰りを待ってあげたいと思う人もいるでしょう。
学校によっては学童保育がなかったり、頼れる実家が近くにない人な何かと心配なこともあるでしょう。放課後、家にお母さんがいてくれれば子供は不安にならずに済みますし、ゆっくり子どもの話を聞いてあげれば子供も嬉しいはずです。
仕事に情熱をもてない
子供の事情で早退・欠勤が続くと、責任あるポジションから外されたり、プロジェクトメンバーから外されて補助的な業務を行う担当に異動させられることもあるでしょう。
仕事に復帰できても時短勤務が続き、キャリアの道が閉ざされたと感じると、仕事に対するやりがいや情熱が失われやすくなります。
子供の教育に尽力したい
学習塾や習い事の教育費が確保できている家庭では、子供の成長とともに最善の教育環境を与えたいと考え退職を決断することも。
塾や習い事の送迎を行ったり、子供の勉強サポートを行うためには、それなりの時間と労力が必要です。家庭の教育熱や勉強時間の格差で、子供の才能や可能性を摘むことは避けたいと考える、教育熱心な親(お母さん)の退職理由とも言えるでしょう。
肩身が狭い
子供の体調不良によって早退や欠勤を余儀なくされるワーママは、周囲に迷惑をかけているという負い目から肩身が狭くなり、仕事を辞めたくなります。
女性の活躍を応援している企業であれば、理解してもらいやすいのですが、もし妊娠中からマタハラ(マタニティ・ハラスメント)を受けていた経験のある人は、出産後の環境もあまり期待できないと考えるでしょう。
子供を理由にするなら失業手当の延長申請を
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失業手当とは、雇用保険に加入していた人が離職してから一定期間受給できるお金です。受給者本人の年齢と雇用保険に加入していた期間によって、失業手当の金額や受給期間(日数)が異なります。
育児や子育てを理由に退職する場合は、失業手当の延長申請を行い、もらえるものは洩れなくもらいましょう。
子育てが理由の退職は失業保険の給付制限期間がない
退職理由が「育児のため」であれば、「自己都合退職」の中の「特定理由離職者」に該当します。
普通の自己都合退職の場合は、ハローワークで失業給付受給資格の決定を受けてから3ヶ月間の給付制限があるものの、特定理由離職者の場合は、自己都合退職でも給付制限期間がありませんので、失業手当の延長申請が必要です。
なお、延長手続きは退職から30日以内に行わなければ、特定理由離職者の対象にならない可能性がありますので、手続きを忘れないようにしましょう。
正社員やフルタイムなら育休・休職制度もある
正社員などフルタイム勤務であれば、育休・休職制度を活用することもできますが、パート勤務の主婦は、時給や日給制なので福利厚生は所属先の雇用形態により違いがあります。
より詳しい条件を知りたい人は、厚生労働省の資料をご参考ください。
退職理由に子供を使う場合は円満退職を目指して
子供をはじめ、夫の転勤、引っ越し、介護などを理由に退職する日がくるかもしれません。どのような理由であっても退職する際は、今後のことも考えてポジティブな伝え方で円満退職を目指しましょう。
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