管理職を辞めたい!選択肢はたくさん!辞めるときの注意点は?

管理職を辞めたいと思いながらも、辞めた後を考えると二の足を踏んでしまい、心の整理がつかないと悩んでいる人は多数います。

管理職の多くは30代40代以降の中年層のため、若い世代と比べて採用されにくいのではないか?など、転職に前向きになれない気持ちになるでしょう。

管理職を辞めたい理由や、管理職を辞めたい人が選択できる手段を見ていきましょう。

管理職を辞めたい理由

昼の街

管理職は会社にとって不可欠な役割を担っており、とても重要なポジションのため、やりがいを感じながら前向きに職務を行っている人は多くいます。

しかしその一方で、ならなきゃ良かったと後悔したり、精神的に追い詰められてしまう人もいます。

社内での評価が高い人が抜擢され、本来であれば人生の成功者ともいえる管理職ですが、辞めたいと悩んでしまうのはどうしてなのでしょうか。

組織のビジョンとの不一致

新入社員で入ったばかりや仕事を覚えるのに必死の時期は、会社が掲げるビジョンや理念について深く考えることはないでしょう。

しかし、勤務年数が長くなってくると、働き方は理念やビジョンを意識したものに変化していきます。会社の向いている方向が自分の見ている先と同じかどうかは、今後も「会社に貢献したい」と思うかどうかに不可欠な要素となってくるのです。

ましてや管理職は、企業理念を多くの従業員に浸透させるべき立場。

理念やビジョンに賛同できない状態では、自身の意思と行動が伴わない状態となってしまいます。

向いている方向が全く違えば、上からの指示にも従順に応じられなくなり、管理職を辞めたいと思うようになります。

管理者としてのスキルが不足している

管理職には、主に次の4つのスキルが重要とされます。

  • 部下が業務を行いやすいように悩みなどを気軽に相談できるコミュニケーション能力
  • 業務をスムーズに遂行するためのタスク管理やマネジメント能力
  • 会社に貢献できる社員を育てる育成能力
  • 経営陣のビジョンや方向性を理解し、部下に浸透させる能力

いくらあなたが業務の内容を熟知しているスペシャリストだとしても、これらの能力を欠いていれば部下のモチベーションの維持や育成が上手くいきません。

管理職に必要なスキルが備わっていない自分は、会社に貢献できていないのでは?と悩み、辞める選択肢が浮かんできてしまいます。

板挟みの立場が精神的に負担

プレイヤーを経て管理職になった人は、現場で働く部下たちの立場を経験しているため、面談などで苦しい心のうちを聞かされると相手の気持ちがよく分かるでしょう。

しかし同時に、現在は経営陣に近い立場にいるので、会社の意図も十分に理解ができます。

つまり、両方の気持ちが分かり、板挟みの状態になりやすいのが管理職。

上司と部下から挟まれた状態が続くと、やがて「サンドイッチ症候群」を発症する恐れがあります。

サンドイッチという呼び名の軽やかさや面白さとは異なり、頭痛やめまい、動悸、不眠などの症状が現れ、仕事だけではなく日常生活に大きく影響を及ぼします。「サンドイッチ症候群」は、管理職を辞めたいと思う人の多くが悩む原因のひとつであり、侮ってはいけません。

進行すると抑うつ状態となってしまい、社会復帰が困難な状態まで追い込まれてしまいます。

成果が出ない

管理職になったばかりだと、部下への指導や支援が上手くいかずに思うような成果が挙げられず、自分に管理職は向かないのではないかと落ちこむ人は多いです。

また、いくら自分が熱心に指導をしても、やる気や向上心を持っている部下ばかりとは限りません。手抜きばかりを考えていたり、あり得ないミスを繰り返すなど、自分と部下との温度差に愕然することもあるでしょう。

プレッシャーに耐えられない

部下が起こしたトラブルや失敗の責任を負い、上司に報告するのは管理職の業務です。

一方で、チームの売上目標の達成が厳しい状況の場合、自らが営業マンとして取引先へ乗り込んで、成果を挙げなくてはいけません。

つまり管理職は、自分の業務だけではなく、チームを管理する立場としても常にプレッシャーを感じている状態になります。

マネジメント&プレイヤーとして気が休まるタイミングがなく、プレッシャーによって精神的に追い詰められてしまうと、自分には荷が重いと投げ出したくなる人は多いでしょう。

激務で疲労が大きい

働き方改革により、プライベートの時間を大切にする若い世代が増えましたが、中間管理職に就く人が多い50~60代においては、働き方改革によってむしろ激務に追い込まれている実態が一般社団法人日本能率協会の調査によって明らかになりました。

早帰りする若い世代の仕事を管理職が肩代わりして行うケースに加え、従来の管理職の業務もあり、目に見えない労働時間が積み重なっていきます。

当然ながら疲れが取れない状態が続くので、管理職を辞めて楽になりたいと思うようになります。

周りに相談できない

ビジネス業界では一般的に、仕事の相談は自分と同等の権限を持つ人に行うというルールがあります。

部下や後輩に相談をして本人はスッキリできても、相談をされたほうはモチベーションが下がり、仕事への意欲が削がれてしまうといった問題点があるからです。

これは、管理職として絶対に避けなければなりません。そのため、最初から部下や後輩は相談先の対象からは除外されます。

待遇に不満

労働基準法第41条第2項では、管理監督者に該当する場合は残業代が支払われません。

管理監督者とは、経営者と同等の権利を有する従業員と位置付けされており、管理職も含まれます。

ただし、管理職=管理監督者ではないため、経営者と同等の権利は有していないケースもあります。それにも関わらず、会社側の拡大解釈により、管理職は残業が支払われないなど待遇が不相応であることが多いのが実情。

こうした管理職を「名ばかり管理職」と呼び、重大な違法行為となります。

膨大な業務と責任は押し付けられるのに、残業代すら支払われないのであれば、不満が溜まり、管理職を辞めたくなるのは当然の気持ちです。

部下に感情移入しすぎる

手塩にかけて育てた部下から、「ほかにやりたい夢が見つかったので会社を辞めたい」と言われたら、笑顔で送り出してあげる自信がないのであれば、それは部下への思いが強すぎている証拠。

部下が自分の思い通りにならないとショックを受けたり、特には「誰がここまで育ててやったと思っているんだ!」など、パワハラと受け取られる言動を発してしまうかもしれません。

どちらにしても、部下への強すぎる思い入れはチームのモチベーションを下げ、管理職としては失格です。

プレイヤーとして活動したい

管理職になってみたら、現場でプレイヤーとして活動していたときのほうが、自分らしく、生き生きと働けていたと感じる人はいます。

プロスポーツの世界でも、「名選手が名監督になるとは限らない」とよく聞くものです。つまりそれだけ、現場と管理の仕事は違うということ。

営業職から管理職に異動する場合は、全く別の仕事を始めると自覚し、研修やセミナーなどが受けられる体制を会社側が整えるべきでしょう。それがないままに管理職になってしまうと、現場での仕事が懐かしくなり、あのころに戻りたいという気持ちが強くなってしまいます。

肩書だけの管理職でみっともない

上から降ってきたものをそのまま下に流し、下から吸い上げたものに少し色付けして上に報告するだけで、管理職としてのビジョンや目標を持つ必要がない状況ではやりがいを見出せません。

課長や部長とは名ばかりで、誰がなっても同じようにこなすことを求められるのであれば、自分が留まる必要はないのでは?と思うでしょう。

人事の決定が辛い

管理職は人材育成の役割を担っているため、人事に関しても一定の権限を持たされます。

部下のボーナス査定を始め、特には解雇や昇進などの難しい決定を下す必要もあり、人ひとりの人生を自分が左右する状況と向き合うこともあります。

女性にとって管理職は過酷な環境

昼の街

世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダー・ギャップ指数で、日本は146か国中116位となり、G7(主要先進7か国)では最下位となりました。

2015年の女性活躍推進法の施行により、女性の社会進出及び役員数は増えているものの、諸外国と比べて女性管理者の数は少なく、まだまだ男性中心の職場が多いのが現状です。

それゆえ、男性中間管理職者が抱える悩みとはまた別の角度で、管理職を辞めたいと思う女性は多くいます。

男尊女卑の考えが根付いている

法律の施行や世間の流れなどを汲み、女性管理職を置く会社は増えています。

しかし、いざ管理職に就いたものの、女性の意見は聞いてもらえなかったり、発言権すらなかったなど、性差に対する差別や偏見に直面する例も。

「自分が管理職になったのは、社外に向けたアピールに過ぎない」と感じたり、組織の体制や運営が古い状態から更新されていないため、別の環境で働きたいと思う人は少なくありません。

報酬の不平等

厚生労働省の調査によると、日本は男女の賃金格差が大きく、女性は男性の7割程度に留まっています。女性の働き方としてパートや契約社員が多いのが理由となりますが、正規雇用で比較しても男女に差があります。

管理職であっても男女に賃金格差があるのが実情であり、男性と同等の役職に就いても、女性が受け取る金額は男性より少ないため、管理職になりたがらない、または管理職を辞めたいと思う女性が減りません。

家庭との両立が困難

管理職は一般職と比べて業務に関わる時間が長くなり、必然的に家事や育児にかけられる時間が減ってしまいます。

また、管理職(仕事)と家庭を両立させるのは女性自身が努力すべきこと、という男性側の価値観も、女性が管理職を辞めたい原因として挙げられます。

時短勤務が可能であり、性別による役割分業の意識を変えられる職場であれば、管理職に意欲を持つ女性は多いとされます。

これからは、女性が当たり前に働く時代。本当の意味で家庭と仕事と両立を目指すのであれば、環境が整備された会社へ移ることも視野に入れましょう。

管理職を辞めたい人が選択できる手段

昼の街

管理職を辞めたいと思ったとき、会社を辞めるしか道がないと思うと一か八かのようになってしまい、なかなか決断ができません。

しかし、多数の選択肢があれば、より自分の希望に合った方法を選べます。

役職を降りる

会社のビジョンや上層部の考えなどに付いていけないのではなく、単に管理職が自分の性格に合わないと感じているのであれば、会社を辞めるのではなく、管理職のみを辞めてプレイヤーに戻る方法があります。

こうした理由であれば、会社側としても、このまま管理職を続けさせて心身の調子を損ねてしまうより、活躍できる場に戻すのが妥当と考えるでしょう。

ただし、あなたを管理職に抜擢した任命責任をとらされる上司や、自分よりも先に出世したあなたを根に持っている同僚などから、厳しい目が向けられる可能性は高いです。

独立する

フリーランスは全ての業務を自分1人でこなさなくてはならないため、管理職よりも仕事は多岐に及びます。さらに最初は収入も安定しません。

しかし、上司や部下の存在がなく、なんでも自分で決められる自由さを手に入れられます。管理職に比べて、精神的な負担は格段に減らせるでしょう。

キャリアが重要な業種であれば、管理職経験も含めた実績が評価され、独立直後から仕事が入ってくる可能性も。

転職する

管理職が一般職に比べて転職が難しいのは、管理職から管理職への転職を希望する場合です。

大手の転職サイトやエージェントには一般職の案件が多く掲載されており、管理職の求人数は全体の2割程度と少ないため、狭き門と感じてしまうのでしょう。

管理職から一般職への転職であれば、年齢による条件などを除いて、そこまで心配する必要はありません。

管理職は自分に合わないと感じて辞める場合は、次は管理職を選ばないですから、マイナビやDODAなどにまずは登録をして、非公開求人のなかから、自分のやりたい仕事や合いそうな職種をどんどんと開拓してみましょう。

取締役を目指す

上司と部下の板挟みに悩んでいる、会社の理念やビジョンが自分とは異なるといった理由で管理職を辞めたいのであれば、思い切って発想を転換し、自分が取締役になって会社を率いる方法もあります。

会社自体に愛着がある、仕事や職種が自分に向いているのであれば、管理職が辛いという理由だけで辞めてしまうのはもったいないです。

今のまま頑張る

管理職は誰にでもなれるポジションではありません。

大変な面は多いですが、やりがいがある、年収やスキルアップの機会を得られる、会社の需要な情報を知ることができるなど、一般職とは異なるチャンスに恵まれやすく、将来は経営陣として会社を支える存在になる可能性もあります。

今は確かに辛いですが、それも通過点と割り切って、管理職を続ける道もあります。

管理職を辞めたい人が実践すべきこと

昼の街

管理職ならではの悩みを一気に解決するのは難しいですが、工夫をして少しずつ改善するのは可能です。

100から0にはなりませんが、80、70と負担の度合が減っていけば、心に余裕が生まれてきます。

本当に辞めるのは、その努力をしてみてからでも遅くはありません。

部下を信頼して任せる

プレイヤー経験があると自分がやったほうが早いと思ってしまい、部下に仕事を任せられない人がいますが、部下が成長しなければいつまで経っても状況は変わりません。

成果が出せない部下に苦慮しているのであれば、今までより少し難易度を下げた仕事を与えて部下に成長機会を作ってみましょう。

業務量が多く疲弊しているのなら、部下に仕事を割り振りし自分の負担を減らしてみてはいかがでしょうか。

どちらも、「失敗してもどうにかなる」業務であれば、自らは手を離し、見守る姿勢を取ることが大切です。

人事部にモニタリングをお願いする

部下が思うように育たない、指示が上手く通らないなどの課題がある場合、部下だけに問題があるのではなく、もしかしたら管理職のマネジメントに問題がある可能性があります。

しかし、自身のマネジメントを客観的に分析するのは簡単なことではありません。そのようなときに有効なのがモニタリングです。

会社を始めたとして組織では、組織の課題や問題の解決に向けて組織サーベイ(広い範囲で行う調査のこと)を行い、サーベイによって得られた結果から改善案を出して実行する方法がありますが、これを管理職にも応用します。

上司や部下、同僚といった周りの社員からの率直な意見を通じ、自分では気づいていない問題を可視化してみましょう。

管理職の人数を増やす

AmazonのCEOジェフベゾス氏は、ひとつのチームに最適な人数は、ピザ2枚で賄える5~8人が適切であるとしています。つまり、1人の管理職は5~8人のチームを率いて業務にかかるのが理想的であるということ。

これに対し、内閣官房内閣人事局の調査では管理職の半数が、11人以上のチームを率いていると明らかになりました。

もし、8人以上のチームのマネジメントをしているのだとしたら、それは理想的ではありません。業務の効率が下がり、会社への貢献度も落ちてしまうので、管理職を増やすよう要請してみましょう。

迷わず管理職を辞めたほうが良い人

昼の街

管理職は立候補してなれるものではなく、あくまでも上層部が管理職に向いていると判断した人を抜擢するものです。

とはいえ、なかには管理職には向いていない人が、管理職を行っているケースもあります。

モチベーションが欠如している人

プレイヤーとして自分の能力を発揮したい気持ちが強く、管理職の役割に対する情熱や興味が全くない人は管理職を辞めたほうが良いでしょう。

こうした人の元では、部下の適正に合わせた仕事の割り振りが行われず、チームの方向性が見失われてしまいます。あなただけではなく、部下のやる気も削がれてしまい、会社にとっても良い成果は得られません。

高いストレスに耐えられない人

どのような仕事でもプレッシャーやストレスが0ではありませんが、管理職の場合、自己管理を徹底していれば良いわけではなく、チームや会社の方向性を常に気にしていなければなりません。

時には部下のストレスの解消にまで意識が及ばなくてはいけないため、役割に伴うプレッシャーは想像を超える高さになります。

それも「やりがい」と感じられれば良いですが、上手く適応できず、健康や生活に影響が出ている場合は管理職には不向きといえます。

上司とも部下とも折り合いがついていない人

管理職は上司と部下に板挟みにされる立場ではありますが、どちらの顔色も伺って、自分の意見や意思を伝えられないのであれば、管理職としての役割を果たせていません。

上司の機嫌を取ることだけに気を遣えば、現場で働いている部下の不満が溜まります。

反対に部下の意見をなんでも吸い上げて上司に伝えてしまうと、上司からは会社や組織のビジョンを正しく認識していないと判断されるでしょう。

折り合いをつけるというのは双方に良い顔をするのではなく、現場の責任者として伝えるべきことはしっかりと伝える意思の強さが必要になります。

管理職を辞める際の引き継ぎ事項

昼の街

管理職を辞めるのが決まったら、以下の3つの点を中心に引き継ぎを進めていきましょう。

現在のプロジェクトの進捗状況

進行中のプロジェクトがある場合は、進捗状況と併せて自分が行っている業務を一覧にし、引き継ぎ書として作成しましょう。

引き継ぎ書は誰が読んでも分かる内容で記すのが絶対条件です。後任者がスムーズに仕事に入れるよう、配慮した作りを目指してください。

今後のタスクスケジュール

タスク管理は、管理職の大事な業務のひとつです。

部下のタスクスケジュールを含め、業務に関係するあらゆるタスクを洗い出しておきましょう。

社外の重要人物への引き継ぎ連絡

重要な取引先や顧客については、早めに担当者が変更する旨を伝えてください。

直接会って挨拶をしたほうが良いと判断するのであれば、後任者と一緒に挨拶に行きましょう。顧客や取引先の不安を取り除き、安心感や信頼感を損なわないようにする意識が大切です。

このとき、会社に対する不満があって辞める場合でも、その旨は相手に伝えないようにしてください。なぜなら、「あの会社は、管理職が辞める会社だからやばい」といった評判が立ってしまうと、後任者が仕事に差し支えてしまう可能性があるからです。

退職理由の伝え方は、十分に配慮して行いましょう。

管理職を辞めたい人は今後の動きを決めよう

昼の街

管理職を辞めたいと思ったら、辞める以外に降格の申し出や取締役を目指すなど、様々な道があります。管理職が辛いから会社を辞めるしかないと思うと追い込まれてしまいますが、いくつか方法があるなら、そこから自分に合うものを選べば良いと、少し気が楽になるのではないでしょうか。

また、すっぱりと会社を辞めて管理職から離れたいけれど、退職や転職に不安があるという人は、転職サイトの活用をおすすめします。

豊富な求人からあなたに合った仕事をアドバイザーが紹介してくれるので、介護士や看護師、公務員への再就職など、自分では考えなかった新しい道が開ける可能性も。

転職サイトを利用しても必ず転職する必要はないので、気軽に登録してみましょう。

TOP