国の「働き方改革」などによって働く環境は改善している一方、SNSやブログでは「就労時間が長くて仕事辞めたい」「なぜ残業がなくならないのか?」といった不満の声も見受けられます。
そこで今回は、会社が残業を強制する原因とその対処法を解説し、あなたの疑問や悩みに向き合います。
1日に与えられた時間は有限です。本文を一読し、日々の残業にピリオドを打って、人生を謳歌するためのヒントを得てください。
残業当たり前がおかしいと感じたときの対処法
- 「慢性的な残業から抜け出したい」
- 「もっとプライベートな時間を大切にしたい」
と思う人は、以下で紹介する13の対処法を参考にしてみてください。
業務に線引きをする
社員ひとりひとりの責任範囲を明確にし、業務に線引きすることが大切です。
残業が常態化している企業では、責任範囲があいまいなケースが多々あります。
自分が行うべき業務とほかの社員が行うべき仕事を分けたら、まずは自分の「担当領域」を全力でこなしましょう。
無駄を省く
業務内容を見直し洗い出し、これまで当たり前とされてきた無駄を省けば、業務作業がよりシンプル化します。
例えば、
- 紙ベースをペーパーレスにする
- 手動化を自動化にする
- 複数回に分けていた会議を1回にする
- 日報を週報にする
など
無駄を省くためには会社レベルで仕組みを変える必要がありますが、作業が簡略化すれば、時短につながり残業時間も減少するでしょう。
生産性を上げる
残業前提で就業時間をダラダラ過ごしては、生産性も高まりません。生産性を上げるおすすめの方法(4つ)としては、
- 朝、メールチェックをしてその日の仕事の優先準備を決める
- パソコン操作は、右クリックメニューよりもショートカットキーを使う
- よく使う資料作成には、テンプレートをあらかじめ作っておく
- あらかじめ終了時間を決めてからミーティングや会議を始める
作業効率を短縮できる仕組みを作っておくことで、生産性を少しずつ上げていきましょう。
帰宅時間を少しずつ早める
「上司や同僚より先に退社しずらい…」という人は、帰宅時間を少しずつ早めてみてはいかがでしょうか。
週1回からで良いので徐々に残業の時間を減らしていき、定時退社を目標に取り組んでみましょう。
仕事は生産性が大切ですから、自分がやるべき仕事をしっかり行っておけば、定時帰宅しても誰からも文句は言われないはずです。
雰囲気に流されない
周囲の人が残業している雰囲気に同調して、職場に居続けるのは辞めましょう。
自分のやるべき仕事が終わったなら帰る、というスタンスを貫くことが大切です。
周りの雰囲気に流されていると残業する理由はいくらでも出てきますから、周りの空気や圧に影響されず、「担当業務は完了したか」を判断し退社することも大切です。
残業は緊急時のみと決める
自分の仕事が済めば定時退社しても構わないと申し上げましたが、会社が緊急事態などで困っているのに全く残業しないのはあまりに非情な対応です。
上司から直接仕事を頼まれたり、周囲だけではどうしても解決困難(重要性&緊急性が高い)場合は、残業して協力する姿勢も大切です。
毎日残業する必要はなく、緊急時のみは残業すると決めておきましょう。
ビジョンを見つめ直す
残業続きで時間に見合った対価をもらえているのか、自分の理想の生活に近づけているかなど、定期的にビジョンを見つめ直す時間を設けましょう。
人によっては、残業が多くてもキャリアップに必要なスキルや知識が身に付くなど、ストレスを感じない場合は問題ありません。
一方で、今の職場に居続けることでストレス過多になっていたり、自分の生活の質が下がるようなら、退職や転職したり人事部に相談して部署異動を希望しても良いでしょう。
出力を6割で取り組む
特に完璧主義者や真面目な人は、良い意味で「手を抜く」ことも必要です。
60%くらいのエネルギーで仕事に取り組めば、40%の体力的・精神的な余力が生まれるということですから、仕事が長続きしやすくなります。
出力を6割に抑えておくと毎日100%の力を出し切るより、アイデアが浮かびやすかったり、より冷静な判断ができるなどメリットが多いものです。
サービス過多を止める
相手のことを想って必要以上のサービスを提供すれば、クライアントやお客様は喜び、あなたに感謝してくれるでしょう。しかし、どこかで線引きしなければ、仕事のループから抜け出せなくなってしまいます。
仕事が楽しくて、人に喜ばれることが好きな人は良いかもしれませんが、残業せず定時退社を目標にしたいなら、サービス過多の習慣を止めるのも方法のひとつです。
自分の状況を客観視して無理しない
慢性的な残業が多い人は、自分のストレスを客観視することも必要です。
- 体力的に疲れている
- 精神的に疲れている
- 自分の時間がほとんどない
- 家族との時間がない
など
物理的・精神的に明らかな異常をきたしている場合は、要注意。
健康でなければ、良い仕事もできません。社員の健康を蔑ろにするような職場から早く距離を置くべきです。
成果を出すことに集中する
ビジネスにおいては、成果が一番大切とされており、成果が出せなければいくら残業をしても意味がないと判断されてしまいます。
成果を出すためには「効率×時間」が重要です。残業してダラダラ仕事をするのではなく、成果目標を定めて集中することが大切です。
未払い給与があれば請求する
サービス残業などで残業代が払わない職場は、要注意。
残業するのが当たり前に強要されている場合や、明らかに業務量が多いのにも関わらず1ヶ月の残業代が安く固定されている会社もブラック企業である可能性があります。
いずれにしろ残業代を払わないのは違法行為なので、まず未払いを請求しましょう。
会社側にも対処をお願いする
会社側が残業を強制する為には、就業規則や雇用契約書に、業務命令権の根拠を記載しておかなければなりません。時間外労働の記載がない場合は、会社に見直しをお願いしましょう。
仮に記載があるとしても、上限時間を超えて残業を強制することはできません。悪質な会社は、上限時間を定めず残業を強制してきますので、入社前に「ホワイトな」会社かどうかを見極める必要があります。
残業当たり前は法律上観点からもおかしい
残業当たり前となっている会社は、法律上(労働基準法)の観点から問題を抱えている場合があります。
あなたは毎日どのくらい残業していますか?
法律でも毎日3時間以上は違法
多くの会社では、「36(サブロク)協定」が締結されています。
36協定とは、
- 労働時間は原則として1日8時間・1週40時間以内
- 法定労働時間を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合は、「労働基準法第36条に基づく労使協定の締結」「所轄労働基準監督署長への届出」が必要です。
- 36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1ヶ月、1年当たりの時間外労働の上
限」などを決めなければならない
出典:厚生労働省
つまり毎日3時間残業して20日勤務したと仮定した場合、月の残業時間は60時間となり36協定に違反することになります。
しかし、残念ながらこの原則は多くの会社で守られておらず、そもそも多くの従業員は1日3時間以上の残業が違法だと気づいていないのが現状です。
会社にとってもメリットが少ない
社員に残業させる会社では、毎月多額の残業代を支払わなければならないため、無駄なコストが発生します。
正社員の残業代として、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業した場合、25%以上割り増しして払わなければなりませんし、深夜時間も同等の割増率が適用されますから、会社にとってあまり好ましくない状況と言えるでしょう。
経済産業省のデータを見ると、人件費を示す指標が会社にかかるコストの約半分を占めていることが分かります。
下記の表は、「労働分配率」を表したものです。労働分配率 とは、付加価値額に対しての人件費を示す指標であり、会社が新たに生み出した価値のうちどれだけ人件費に分配されたかを示す指標。「労働分配率 = 給与総額 ÷ 付加価値額 × 100」で算出されます。
業種 | 2019年度 | 2020年度 |
---|---|---|
製造業 | 50.8% | 51.0% |
卸売業 | 49.5% | 49.7% |
小売業 | 50.0% | 49.4% |
社員のワークライフバランスを保てなくなる
残業が慢性化している社員は、一日のほとんどの時間=仕事となり、ワークライフバランスを保つのが難しくなるでしょう。
睡眠時間が十分に確保できなかったり、余暇でリフレッシュできなければ、誰でも体力的・精神的に疲弊して当然です。
ミスの増加・生産性の低下はもちろん、過労で従業員が離職すれば人手不足に陥るでしょう。残業が当たり前の会社は、従業員と会社のどちらにとってもダメージが大きいことは明らかです。
近年では、さらなる収入ややりがいを求めて、副業を始める人も増加しています。スマホ1台で稼げるという時代の風潮もあり、本業だけに縛られずワークライフバランスを重視する人は今後も増加するでしょう。
残業当たり前になる理由
残業文化から抜け出せない会社には、それなりの理由があります。
企業体質をアップデートできない背景を、チェックしていきましょう。
会社の体質が古い
昔の日本(特に高度経済成長期)は、男性も女性も関係なく残業をするのが当たり前でした。
経済再建に必死で、経済大国を作り上げた日本人の記憶の中には、その頃の意識が現在でも根付いている会社が多くあります。
その古い体質の名残が残る昭和気質の会社では、定時退社する価値観に抵抗があるのかもしれませんね。
上司の権力に依存している
上司の権力に依存している職場は、上司の命令が絶対であるため残業を断れない雰囲気があります。
従業員ひとりひとりが考えて行動することが許されない環境では、慢性的な残業に誰も異議を唱えられず、業務改善することは難しいでしょう。
人材不足
特に一次産業(農業・林業・水産業)や工場勤務では、人手不足の傾向があります。
会社側が人件費を抑えるために新規採用をセーブしたり、新規採用しても人がなかなか定着しない職場では、残された従業員でやり繰りしなければならず、残業のループから抜け出せない状況が続いています。
業務効率が悪い
人手がそれなりに足りていても無駄な業務が多かったり、業務効率が悪いと、当然のことながら残業が増えてしまいます。
例えば、
- 仕事の優先準備を決めず着手し始める
- ダラダラと会議を続ける
- 便利なツールを使わず昔の手法にこだわる
など
業務効率を上げるためには仕事内容を見える化し、計画的に終わらせることが必要です。
雰囲気が定着してる
先輩職員が残業しているのに、新人の自分が先に変えるのはおかしい…といった雰囲気が定着している職場もあるでしょう。
空気を読みすぎて帰りにくい雰囲気に影響されているうちは、残業はなくなりません。自分の価値基準で行動できる強さも必要です。
残業当たり前はおかしいので今すぐ行動を
無駄な業務が多かったり、無茶な業務量で、残業が当たり前になっている会社は異常です。
会社に改善を求めても変わらない場合は、「辞める」という選択肢も検討しましょう。
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